「高校野球は後半勝負」。実況やニュースでよく耳にするこの言葉は、データの上でも正しいのでしょうか。 稜線-Ryosen-編集部では、第108回全国高校野球選手権大会の 1回戦17試合・2回戦16試合、合計33試合のイニングスコアを、日本高等学校野球連盟の公式集計をもとに分析しました。
7〜9回を制したチームが、試合にも勝った確率
後半3イニングの得点合計で勝敗を比較すると、7〜9回に得点差がついた23試合のうち、 その回を制したチームが最終的にも勝利したのは16試合、69.6%でした。後半の勝敗と最終結果には、 明確な関係が見られました。7〜9回は「逆転する時間」というより、「勝ち切る力が表れる時間」と言えそうです。
勝敗を強く分けた2つの数字
後半の重要性以上に際立っていたのが、「先制」と「6回終了時点のリード」です。先制したチームの勝率は75.8%。 さらに、6回を終えた時点でリードしていたチームの勝率は93.1%にのぼりました。 最終的な勝者のうち、6回終了時点でリードしていたのは27試合(81.8%)、同点だったのは4試合、 ビハインドだったのはわずか2試合のみです。ここまでのところ、「終盤の逆転」よりも「中盤までのリード」の方が、 勝敗への影響は強く出ています。
逆転勝ちはどれくらいあった?
先制された側が逆転勝ちした試合は8/33、24.2%でした。ただし、その多くは試合の早い段階での逆転で、 7回以降のビハインドからの逆転は、有明対立命館宇治、日南学園対明徳義塾の2試合のみです。 再逆転を含めた広義の逆転勝ちで見ても9/33、27.3%にとどまり、「劇的な終盤逆転」は、 件数として見ると決して多くはありませんでした。
データから見えた勝ち筋
ここまでの数字を、試合の序盤・中盤・終盤という時系列で整理すると、次のような勝ち筋が見えてきます。
先制チームの勝率 75.8%
先制チームは25勝8敗。まず主導権を握ることが、優位の起点になっています。
6回終了リードチームの勝率 93.1%
6回終了時点でリードしていたチームは27勝2敗。中盤までの主導権が、勝敗にほぼ直結しています。
後半に勝ったチームの勝率 69.6%
後半に勝ったチームは16勝7敗。最後まで主導権を維持する力が、勝敗を決定づけます。
終盤だけが勝負ではない。序盤に先制し、中盤で主導権を握り、終盤で勝ち切る。
イニング別|得点の入り方
| イニング | 得点合計 | 得点した回数 |
|---|---|---|
| 1回 | 17 | 12 |
| 2回 | 18 | 13 |
| 3回 | 33 | 18 |
| 4回 | 15 | 12 |
| 5回 | 26 | 13 |
| 6回 | 32 | 19(最多回数) |
| 7回 | 25 | 15 |
| 8回 | 13 | 9 |
| 9回 | 35(最多得点) | 18 |
| 10回TB | 1 | 1 |
※全33試合・表裏を合算。得点合計215点、得点した回数130回(1チーム1回=1回でカウント)。9回裏Xは攻撃機会なし。
イニング別に見ると、得点した回数がもっとも多かったのは6回(19回)、得点合計がもっとも多かったのは9回(35点)でした。 9回に得点が集中する背景には、劣勢のチームが最後の攻撃で一気に加点を狙う展開や、 優勢のチームが試合を決めにいく攻撃が含まれていると考えられます。
ここから、考えたいこと
「後半が勝負」という言葉は、間違いではありません。7〜9回を制したチームの勝率は69.6%と、 たしかに終盤の攻防は結果を左右しています。しかし今回のデータが示すのは、 それ以上に「先制」と「6回までのリード」が持つ影響力の大きさです。
終盤だけに注目していると、見落としがちな部分があります。序盤に主導権を握り、中盤でそれを守り、 終盤で勝ち切る。この一連の流れ全体が、高校野球における「勝ち筋」の実像に近いと言えそうです。 稜線-Ryosen-編集部では、大会の進行に合わせて、 このデータ分析を今後も更新していく予定です。

