AIを会議に招く。ただし、決定権は渡さない
Wharton校のEthan Mollick准教授は、生成AIを仕事や教育で実践的に研究する中で、 「AIを、いつもテーブルに招こう(Always invite AI to the table)」と提案しています。
これは、何でもAIに決めさせるという意味ではありません。企画、分析、批判、比較、記録など、 できる限り多くの場面で一度AIに参加させ、どこまで役に立ち、どこで間違い、何が不得意なのかを人間が学ぶという考え方です。
野球の現場でAIをテーブルに招くなら、目的、現在地、制約、役割、評価基準を先にそろえ、複数の立場から検討させる必要があります。
AIをテーブルに招く目的は、
会話を減らすことではなく、話すべきことを明確にすること。
モデルは、数学に埋め込まれた意見
数学者でデータサイエンティストのCathy O'Neil氏は、 「モデルは、数学に埋め込まれた意見である(Models are opinions embedded in mathematics)」と述べています。
AIの答えが数字や確率で示されると、私たちは客観的な事実だと錯覚しやすくなります。 しかし、過去の評価制度や成功者の特徴を学習したAIは、その組織が過去に持っていた哲学や偏りも一緒に学びます。
野球でも、球速、回転数、打球速度、走塁、体組成、睡眠など、以前とは比べものにならないほど多くのデータを扱えるようになりました。 だからこそ「測れるものだけを大切にする」という新しい偏りが生まれます。
| 場面 | 危険な使い方 | 対話を深める使い方 |
|---|---|---|
| 起用 | 総合点だけで順位を決める | 評価項目と重みを公開し、現場所見と比較する |
| 育成 | 似た成功者のメニューをそのまま当てる | 本人の目的・既往歴・反応を条件に入れる |
| 故障予防 | 高リスク判定だけで登板を止める | どの要因が寄与したかを医療・S&Cと確認する |
| 評価 | 数字を説明責任の代わりにする | 本人が異議や背景を語れる面談を組み込む |
AIを使う前に、最低限問うべきことがあります。成功を誰がどう定義したか。データを誰がどの状況で集めたか。 測れていない重要な情報は何か。このモデルは誰を過小評価しやすいか。そして、判定に本人が異議を申し立て、文脈を説明できるか。
AIリテラシーとは、プロンプトの上手さだけではありません。モデルの背景にある組織の哲学を読み解き、必要なら更新する力です。


