何が変わったのか

今大会から、審判の判定を中継映像で見直す「ビデオ検証」が、選抜大会・明治神宮大会に続き、 全国選手権大会でも採用されました。対象になるのは、ホームランやエンタイトル二塁打の打球判定、 フォースプレー、タッグプレー、キャッチまたはノーキャッチ、フェアまたはファウルの判定です。 ストライク・ボールの判定は対象外で、ハーフスイングは従来通り球審が塁審に確認する手順が優先されます。

各チーム、9イニングで1回まで要求できる(判定が変わった場合はもう1回追加可)
申し出は、ベンチからの伝令役の選手を通じて球審に伝える
開始から2分以内に確証が得られなければ、もとの判定のまま試合再開
実施は全国大会のみ。都道府県の地方大会では未実施

8月7日には、有明高校対立命館宇治高校の試合で初めて実際に適用されました。7回2死一塁での二盗の判定を巡り、 有明ベンチがビデオ検証を要求。結果として、判定は「アウト」のまま変わりませんでした。

"高校野球らしさ"を残した設計

今回の制度で興味深いのは、申し出の方法です。プロ野球のような監督のジェスチャーやリクエスト制ではなく、 ベンチの選手が伝令として球審まで走り、直接伝えるという方式が採られています。 テクノロジーを導入しながらも、高校野球ならではのやり取りを残す設計になっている点は、 制度を作る側の意図が感じられる部分です。

技術を入れることと、
その競技らしさを残すことは、両立できる。

全国大会だけ、という現実

一方で、この制度は今のところ全国大会限定です。理由の一つは費用面で、 すべての地方大会会場に複数アングルのビデオ機材を整備するのは現実的ではなく、 まずは中継カメラが入る全国大会から始める形になったとされています。

つまり、都道府県予選を勝ち上がってきたチームだけが、この新しい仕組みの恩恵(あるいは対象)を受けることになります。 「同じ高校野球なのに、大会によって判定の確認手段が違う」という状況は、今後の議論のポイントになりそうです。

導入の背景にあったもの

この制度の検討が進んだ背景には、判定を巡って審判へのSNS上の中傷が問題視されていたことも挙げられています。 大会側は今大会から、選手・指導者・審判委員・大会スタッフに対するインターネット上の投稿の監視も初めて実施しており、 「誤審かどうか」を曖昧なまま拡散させない仕組みづくりが、複数の方向から同時に進んでいることがうかがえます。

ビデオ検証は、判定の正確性だけでなく、審判・選手・チームを取り巻く環境そのものを守るための制度でもある。 そう捉えると、今回の一件は単なるルール変更以上の意味を持っていそうです。