コンディショニングの最終的な目標は、トレーナーや指導者が毎日選手を管理することではありません。
選手自身が、「今日の自分はどういう状態なのか」「なぜこの状態になっているのか」「今日は何をする必要があるのか」を判断できるようになることです。
では、「今日は調子がいい」は、何と比べて、何を見て判断するのか。
私が選手に毎日確認してほしいポイントを、8つ挙げます。
調子の良し悪しは、何と比べて判断するのか
比べる相手は、他の選手ではありません。
疲労管理で大切なのは、他人と比べることではありません。
同じ練習をしても、疲労の出方や回復する速度は選手によって違います。
だから基準にするのは、その選手自身です。
最終的には、選手自身が判断できるようにしたいと考えています。
そのためには「いつもの自分」を知る必要があります。
普段の睡眠時間、朝の疲労感、身体の張り、可動域、ウォーミングアップ後の動き、投球時の感覚、練習後の疲労、翌日にどの程度戻るのか。
これを知っていれば、「今日はいつもと違う」という変化に早く気づけます。
選手が毎日確認するポイントは何か
私が毎日確認してほしいのは、次の8つです。
- 睡眠は取れているか
- 起床時の身体の感覚はどうか
- 筋肉の張りや重さはどうか
- 痛みや違和感はないか
- 食欲はあるか
- ウォーミングアップで身体は動くか
- いつものスピードやキレが出るか
- 集中力や気持ちの状態はどうか
大切なのは、項目をチェックして終わることではありません。
昨日と今日で何が変わったのか、数日間でどんな傾向があるのか、練習量を増やした後にどう変化したのか。
そこまで見て初めて、情報が判断材料になります。
一つのポイントだけで判断してよいのか
一つの項目ではなく、複数の変化から判断します。
例えば、朝は身体が重くてもウォーミングアップ後にいつもの動きへ戻るのであれば、負荷を調整しながら練習できる場合があります。
一方で、睡眠不足が続き、身体が重く、ウォーミングアップをしても動きが戻らず、いつものキレも出ない。
そこまで重なっているなら、予定されていたメニューをそのまま行うことが本当に必要なのかを考えます。
私は、ウォーミングアップ前だけではなく、身体を動かした後の変化も重要だと考えています。
朝は少し身体が重かった。
しかし、身体を動かして筋温が上がったら、いつもの状態に近づいてきた。
こういう場合もあります。
最初の数値や感覚だけで判断せず、「準備をしたことで身体がどう変化したか」まで見ます。
感覚と数字が食い違うときは、どう扱うのか
どちらが正しいかを決めるのではなく、両方を見ます。
データだけでコンディションを判断することはできません。
反対に、感覚だけでも判断を間違えることがあります。
大切なのは、感覚と数字のどちらが正しいかではありません。
両方を見ながら、自分の状態を理解することです。
例えば、本人は「全然大丈夫です」と言っている。
しかし、タイムが落ちていて、動きにも普段との違いがある。
このズレが大切です。
主観と客観が一致しているのか。
一致していないなら、なぜなのか。
そこまで見て次の負荷を判断します。
選手本人の感覚を指標として使うことについては、研究の報告があります。
2016年に学術誌 British Journal of Sports Medicine に載った系統的レビュー(Saw ら)は、56本の研究を調べました。
同じ系統的レビューが調べたのは、選手本人が答える主観的な指標と、客観的な指標の両方を測った研究です。
同じ系統的レビューは、主観的な指標が、客観的な指標よりも、トレーニング負荷の変化を感度よく一貫して反映したと報告しています。
同じ系統的レビューは、主観的な指標と客観的な指標が、おおむね相関しなかったとも報告しています。
「いつもの自分」は、どうすれば分かるようになるのか
大切なのは、調子が良いときの身体を知っておくことです。
肩はどのくらい動くのか、股関節はどうなのか、左右差はどの程度あるのか、体幹を安定させられるのか、本人はどんな感覚なのか。
この「通常の状態」が分かっているから、変化したときに気づくことができます。
すべての項目を毎日測定する必要はありません。
毎日簡単に見るものと、定期的に詳しく測定するものを分けます。
毎日見るのは、睡眠、疲労感、身体の重さ、痛みや違和感、ウォーミングアップ時の動き、本人の感覚です。
定期的に見るのは、体重、柔軟性と関節可動域、筋力、肩周辺の機能、体幹の安定性、左右差です。
測定すること自体が目的ではありません。
変化に気づくために測定します。


