身体が動かない、球速が上がらない、トレーニングの重量が上がらない、集中力が続かない。
こういう選手を見ると、「もっと練習しなければ」と考えやすくなります。
しかし、その前に私は、「そもそも回復できているのか?」を見ます。
睡眠、負荷、栄養、痛みの順に、確認することを整理します。

睡眠、負荷、栄養、痛みの4つを順に確認する流れを示した図。睡眠では眠れたかと朝の状態、負荷では休養日の前後、栄養では食欲と体重と摂取量、痛みでは我慢して続けないことと張りが何日も続いていないかを挙げている

疲労が抜けない状態とは、どういう状態なのか

かけた負荷に、回復が追いついていない状態です。
トレーニングでは身体に負荷をかけます。
しかし、負荷をかけ続けている時間に身体が強くなっているわけではありません。
練習や試合の負荷が大きくなっているのに、睡眠時間が減っている。
食事量が落ちている。
疲労が抜けていない。
それでも同じ練習を続ける。
これでは、身体が次の負荷を受ける準備ができていません。

負荷が回復より重くなり、天秤が負荷側に傾いている図。練習や試合の負荷が大きくなる一方で、睡眠時間が減り、食事量が落ち、疲労が抜けていない状態では、身体が次の負荷を受ける準備ができていないことを示している

反対に、回復を優先しすぎて必要な負荷まで避ければ、身体は強くなりません。
だから「練習すること」と「休むこと」を対立させないことが重要です。
どちらも成長するために必要です。

睡眠では、何を確認するのか

時間だけではなく、眠れたかどうかと、朝の状態を確認します。
疲労を考えるうえで、睡眠は非常に重要です。
何時間寝たのかだけではなく、しっかり眠れたのか、途中で何度も起きていないか、朝起きたときに回復した感覚があるのか、日中に強い眠気がないか。
こうしたことも確認します。
練習量だけを調整しても、睡眠によって回復できていなければコンディションは上がりません。

例えば7時間寝ても疲労が残る日が続くのであれば、「7時間寝たから大丈夫」で終わらせません。
練習量が多すぎないか、連戦による疲労が残っていないか、食事は取れているか、睡眠中の環境はどうなのか。
他の原因まで見ていきます。

負荷では、何を確認するのか

カレンダー上の「OFF」ではなく、身体が実際に回復したかを確認します。
週に1日休養日を作っているから、疲労管理ができているとは限りません。
その前の6日間にどれだけ負荷をかけているのか、休養日に本当に回復できているのか、睡眠は取れているのか、大会や練習試合が続いていないか。
そこまで見ます。

投手であれば、試合の球数だけでは足りません。
投球数だけではなく、その選手が一日の中でどの程度身体を使ったのかを見ます。

栄養では、何を確認するのか

食欲と体重、そして食事全体で必要な量を満たせているかを確認します。
食べることだけを考えて睡眠を軽視してはいけません。
食べる、練習する、寝る。
このどれか一つだけを頑張るのではありません。
練習によって刺激を入れ、必要な栄養を摂取し、睡眠によって回復する。
この循環を作ります。

糖質は、身体を動かすエネルギー源です。
車でいえばガソリンにあたります。
タンパク質は、筋肉や骨の材料です。
まず、食事全体で必要な量を満たせているかを見ます。

食事は、知識として知っているだけでは整いません。
食べた後の身体の調子、体重の変化、練習での動きを自分で観察しながら、自分に合った食事をつくっていきます。

痛みは、疲労と同じに扱ってよいのか

同じには扱いません。
痛みや明らかな違和感がある場合は、疲労として我慢して続けず、トレーナーや医療スタッフと状態を確認することが必要です。

「疲れた」という一言の中にも、いくつかの種類があります。
筋肉の疲労、神経の疲労、そして筋肉や腱、靭帯に積み重なっていく疲労です。
組織に積み重なった疲労は、抜けるまでに長い時間がかかります。
しかも、張りや痛みとして強く出ないまま進むことがあります。
だから、「筋肉の張りが取れたから大丈夫」とは言い切れません。

確認したあと、選手は何を変えるのか

チェックとは、記録を残す作業ではありません。
次の行動を決めるための材料です。
例えば、睡眠不足、体重減少、強い疲労感が続いているとします。
それなら、なぜ睡眠時間が減っているのか、食事量は足りているのか、練習量が増えていないかを考えます。
原因が帰宅後の生活にあるなら生活を変える。
摂取量が不足しているなら食事や補食を見直す。
負荷が大きすぎるならスタッフと練習量を相談する。

確認して分かったことと、そこから変えることを並べた図。原因が帰宅後の生活にあるなら生活を変える、摂取量が不足しているなら食事や補食を見直す、負荷が大きすぎるならスタッフと練習量を相談する

同じ練習をしても、翌日の反応は選手によって違います。
だから、「これをすれば全員回復する」というものを覚えるだけでは足りません。
自分で試しながら確認します。

NOTE
本稿は、和田照茂氏から稜線 Ryosen編集部に寄せられた文章です。見出しの追加や文言の変更は行っていません。
怪我や体調に関する判断は、医療従事者にご相談ください。
和田 照茂
AUTHOR
和田 照茂
元 北海道日本ハムファイターズ チーフトレーナー/AAAアジア選手権 日本代表トレーナー/鍼灸師
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