選手が、「今日は調子が悪いです」と言ったとします。
そこで終わらず、私はもう少し具体的にしていきます。
フォームを変えるかどうかは、そのあとの話です。
調子が悪い日に、フォームをすぐ変える必要があるのか
すぐに大きく変える必要はありません。
大会前の実戦練習でヒットが出なかったからといって、すぐにフォームを大きく変える必要はありません。
強く振れていたのか、タイミングは合っていたのか、狙ったボールを振れていたのか、打球の質はどうだったのか。
ここを確認します。
反対にヒットになっていても、崩されたスイングや弱い打球が多ければ、状態が良いとは限りません。
結果はもちろん重要です。
大会直前に結果だけを追ってフォームを次々と変えると、今まで作ってきたものまで崩れることがあります。
「全部を直す」のではなく、「今どこが少しズレているのか」を見つけて調整します。
「調子が悪い」の中身を、どう分けるのか
何が悪いのかを、問いで具体的にしていきます。
私が選手に確かめるのは、次の7つです。
- 何が悪いのか
- 身体が重いのか
- 痛いのか
- 関節が動きにくいのか
- 力が入りにくいのか
- タイミングが合わないのか
- 昨日と何が違うのか
例えば投手が「肩が重い」と感じているなら、前日に何球投げたのか、睡眠はどうだったのか、肩の可動域はいつもと違うのか、胸椎や股関節は動いているのか、ウォーミングアップ後に変化するのか、まで確認します。
感覚を具体的にしていくことで、次に何をすべきかが見えてきます。
フォームの乱れは、身体の状態から来ることがあるのか
投球フォームは身体の状態にも影響されます。
胸椎が動かない、股関節が動かない、体幹が安定しない、肩周辺が疲労している、投球量が増えている。
こうした状態になれば、投球動作も変わります。
だから、身体、コンディショニング、トレーニング、投球量、投球技術、回復を分断しません。
フォームを変える必要があるなら変える。
身体の問題なら身体へ介入する。
負荷の問題なら練習計画を変える。
問題と原因を整理してから対策を決めます。
選手は、自分の感覚だけで原因を決めてよいのか
ここで大切なのは、身体の感覚をそのまま正解にしないことです。
感覚は非常に大切です。
しかし、感覚だけで判断するとズレることもあります。
本人は「腕が悪い」と感じていても、実際には下半身や体幹の使い方が原因になっている場合があります。
肘や肩に違和感があっても、肘や肩だけを見ればよいわけではありません。
つまり、身体知覚とは「感じたことをそのまま信じる力」ではありません。
感じたことを出発点にして、実際の動きや映像、指導者の観察、必要であれば医療やトレーナーの評価と照らし合わせる力です。
身体知覚が育っている選手は、自分の感覚を言葉にできます。
「なんか悪いです」ではなく、「リリースの前に身体が開いている感じがします」「踏み出し足に乗る前に腕が出ている感じがあります」と言えるようになります。
ここまで言語化できると、指導者との会話が深くなります。
フォームを大きく直すのは、いつなのか
特にフォームや技術の大きな修正は、時期を考える必要があります。
試合が近い時期に大きくフォームを変えれば、選手の良さを失う可能性があります。
夏の大会前のように実戦が近い時期は、大きく作り替えるより、今ある技術をどう試合で使うかを優先する場面があります。
反対に、冬や準備期間であれば、時間をかけて身体に落とし込み、自動化していくことができます。
普段の練習では、必要な部分に意識を向けて修正します。
どこがズレているのか、何を変えるのか、どの感覚になれば良いのか。
そこを確認しながら反復します。
そして、試合に近づくほど、細かい意識を減らし、プレー全体のリズムや目的に集中していきます。
練習では細部を意識してよい時間があります。
しかし、試合では意識するポイントを絞らなければいけません。
意識することが多すぎると、身体は固まり、判断も遅れます。


