ウォーミングアップという言葉を日本語にすると、「身体を温める」という意味になります。
もちろん、筋温を高めることは重要です。
しかし、私はウォーミングアップを単に身体を温める時間とは考えていません。
ウォーミングアップは、何をする時間なのか
その日の身体の状態を確認し、これから行う練習や試合でパフォーマンスを発揮できる状態まで準備する。
それがウォーミングアップです。
ストレッチをした、ランニングをした、ダッシュをした、キャッチボールをした。
それだけでウォーミングアップができたとは考えません。
その選手が、これから必要になる動きをできる状態になっているのか。
そこまで見ます。
ウォーミングアップとパフォーマンスの関係については、研究の報告があります。
2010年に学術誌 Journal of Strength and Conditioning Research に載った系統的レビュー(Fradkin ら)は、32本の研究をまとめました。
同じ系統的レビューが対象にしたのは、ストレッチ以外の運動を含むウォーミングアップを調べた研究です。
同じ系統的レビューは、調べた評価項目の79%で、ウォーミングアップのあとにパフォーマンスが向上していたと報告しています。
同じ系統的レビューは、よく計画された無作為化比較試験が少なく、さらに研究が必要だとも書いています。
ウォーミングアップの中で、選手は何を確認するのか
私がウォーミングアップで非常に大切にしているのが、その日のコンディションを確認することです。
毎日同じ身体ではありません。
前日の練習量、試合、睡眠、疲労などによって状態は変化します。
選手自身が確かめるのは、次の5つです。
- 今日は身体が重くないか
- 昨日と違うところはないか
- 左右差はどうなのか
- 動かしたときに違和感はないか
- 徐々に動きが良くなっているか
指導者やトレーナーが異変を見つけることも重要ですが、最終的には選手自身が自分の変化に気づけるようになることが大切です。
ウォーミングアップは、どんな順で進むのか
最初から試合と同じ強度で動くのではなく、段階を踏んで進めます。
身体の状態を確認しながら、徐々に筋温を高め、必要な部位へ刺激を入れ、最後に野球の動作へつなげていきます。
私は、次の7つの段階で組み立てます。
- まず身体の状態を確認する
- 筋温を高める
- 必要な可動域を作る
- 必要な部位へ刺激を入れる
- 動きのスピードを上げる
- キャッチボールへつなげる
- 実際のプレーへ近づける
ここで大切なのは、「汗をかいたから温まった」と判断しないことです。
汗をかくことと、野球で高いパフォーマンスを発揮する準備ができていることは同じではありません。
例えば、胸椎・胸郭が動きにくければキャットポーズやツイスト系のストレッチを使う。
投手であれば、肩甲骨・上腕骨のポジションを維持しながら肩周辺へ刺激を入れる外旋プッシュアップなどを使います。
大切なのは、「アップではこのストレッチを必ずやる」と決めることではありません。
何が動いていないのかを確認し、その問題に対して必要なものを選びます。
次の段階へ進む基準は、時間なのか
時間ではなく、身体の状態です。
ウォーミングアップを段階的に行うということは、「5分経ったから次へ行く」という意味ではありません。
身体の状態を見ながら次へ進みます。
可動域は戻ったか、身体は動きやすくなったか、必要な筋肉へ刺激が入ったか、速い動きに対応できるか、ボールを投げた感覚はどうか。
ここを確認します。
もし途中でいつもと違う違和感が出るのであれば、無理に次の段階へ進めません。
必要に応じて強度を落とし、状態を確認します。
痛みがある場合は、トレーナーや医療スタッフへ伝えることも必要です。
ウォーミングアップの前と後で、何を比べるのか
ウォーミングアップが機能しているかを見るためには、前後を比較します。
例えば、開始時には股関節が動きにくかった。
身体を動かし、ストレッチやエクササイズを行ったら動きやすくなった。
これはウォーミングアップによって状態が変化したということです。
一方で、時間をかけてウォーミングアップしても動きにくさが残っている。
違和感が強くなる。
いつもの感覚に戻らない。
この場合は、そのまま強度を上げるのではなく、「なぜ戻らないのか」を考える必要があります。
ウォーミングアップは、その日の練習や試合を開始してよい状態なのかを判断する時間でもあります。
一度ウォーミングアップをすれば、その日は十分なのか
ウォーミングアップは、一度行えばその効果が一日中続くものではありません。
時間が経過すれば身体の状態は変化します。
特に試合では、ウォーミングアップを終えてから試合開始まで時間が空くことがあります。
雨天中断などで長時間プレーできないこともあります。
その間に身体が冷えれば、もう一度準備する必要があります。
「一度アップしたから大丈夫」ではなく、今の身体がどうなっているかで判断します。
出典:Fradkin AJ, Zazryn TR, Smoliga JM. Effects of warming-up on physical performance: a systematic review with meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. 2010;24(1):140-148.


